神僕engage

01

 世の中くだらない。
 世間の不況の煽りを受けたせいかそれともそもそも社会人としての素質があまりにもなさ過ぎるのか、就職活動は全滅、卒業後は晴れてフリーター。バイト先も上手くいかずクビになり、自棄酒かっ食らえば所持金は残り数百円。何もかんもやってられない、いっそ死ぬか。そんなことを考えながらふらふらと歩いていた道すがらに、その場所はあったのだ。

「あ?こんなとこに神社、あったっけ」

 ひく。しゃっくり交じりの独り言。しんとした空気の中、何となく鳥居をくぐったのは気まぐれだ。何が神様だ、神様なんていやしない。神様がいるならもっと報われてもいいじゃないか。頑張って生きてきたのに、いいことなんてひとつもありゃしない。お先真っ暗、人生躓いてサヨーナラだぞこっちは。

「いいよなあ、神様は気楽で」

 将来とか考えなくてもいいもんな。神社の人があれこれ世話焼いてくれるわけだしさ。日がな一日寝てられるし。別に神社に参拝に来た人の願い事を叶えるわけでもなし。そんなことを考えてたら腹立ってきた。いっそここで死んでやろうか、なんて罰当たり。
 一人暮らしの家賃は来月から払うアテはなくて、実家から帰ってこいって言われちゃいるけれど、実家に帰ったところで就職のアテなんかないし。ただの穀潰しになるくらいなら、死んだ方がいっそ親孝行だ。
 さて、神社ってなんか作法あったな。何も思い出せない。まあいいや。どうせ死ぬつもりだからいいかと賽銭箱には所持金全部突っ込んで、適当に手を叩く。夜中だからか閉められた扉の奥は当然見えない。今更神頼みもないけれど、まあ。

「……楽に死ねますように。……なんちゃって」
「そんなに死にたいなら僕と代わろうぜ」
「……、あ?」

 ――いつの間にそこにいたのか。
 賽銭箱の向こう、閉じられた扉の前。一人の子供が座って俺を眺めていた。こんな時間に子供。何、ホラー?酔った頭がすっと醒めていく。やばいことに巻き込まれるのでは?え、俺誘拐犯に仕立て上げられるとか?

「神社で自殺考える奴の方がやばいと思うけどな」
「……いや、なに、だれ?」
「あー、僕ここの神様。ちょうど飽きてんだよね、アンタ代わりに神様やってよ。僕が代わりにアンタやるからさ」
「……中二病?」
「どうせ捨てる命なら僕にくれっつってんの」

 いやこれは確実に中二病の何かに付き合わされてる。コイツ家出少年とかだろうか。適当に口裏合わせて交番に連れて行くが吉じゃない?うん、それがいい。そうしよう。

「分かった分かった、代わってやるから」
「ふふ、『言った』ね?」
「……、あ、れ」

 急に頭がふわふわする。身体が言うことをきかない、動かない。視界に白いもやがかかって、何も見えなくなって、いしき、が。

「――じゃあ、しばらく神様代行よろしくぅ」

 そんな経緯で俺がこの神社の神様に成っただなんて、誰が信じるだろうか。